【悪魔判事ブロマンス】全話ネタバレあらすじ、感想ブログ

チソンの韓ドラのあらすじ&感想、セリフを翻訳します。韓国語勉強中

【悪魔判事二次創作】The Halloween Devil

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「トリック・オア・トリート!」

 

ハロウィンの夜、ヨハンが書斎で「ドラキュラ伯爵」を広げて読書にいそしんでいると、車いすを押しながらエリヤとガオンが勢い良く書斎に入ってきた。

 

「なんだその恰好は…?」

 

ヨハンは訝し気に2人の服装を見比べる。エリヤはお姫様風のドレスを身にまとって頭に紅いカチューシャをつけ、膝にはリンゴとコミが入ったカゴを持っている。ガオンはもふもふした大きな黒い耳のついた帽子と、お揃いの手袋をつけていた。

 

「今夜はハロウィンなの知らないの?

乳母に白雪姫を作ってもらったの。可愛いでしょ」

 

エリヤは満足げにたっぷりとしたスカートを広げてみせる。

エリヤの膝の籠に鎮座するコミも、小さな魔女の帽子をつけていた。

「何がハロウィンだ…」

 

「ハロウィン、あるいはハロウィーンとは、毎年10月31日に行われる、古代ケルト人が起源と考えられている祭のことです。」

 

AI執事が突然割り込む。

 

「そのくらい知ってる。バカにするな」

 

ヨハンはAI執事を睨んだ。

 

「失礼しました。ヨハン主人、ベルギーからの国際便はガオン主人の部屋に置いてあります」

 

「その話も今は必要ない!」

 

「何の話ですか?」

 

「気にするな。それで、君のその格好は何なんだ?」

 

「僕は狼男になりました。部長を襲っちゃいますよ!ガオー!」


ガオンは楽しげに、モフモフした手袋を広げヨハンに襲い掛かるふりをする。

 

「…今ひとつ盛り上がりに欠けるな」

 

顔をしかめながら身を引くと、ボソっとヨハンは呟いた。

 

「え?」

 

「いや…もうちょっと素材を活かしたものが良かったんじゃないか?」

 

「そうですか?可愛いと思ったんだけど。ほら、尻尾もついてますよ?」

 

ガオンが振り返ると、お尻にもフサフサとした黒い尻尾がぶら下がっていた。

 

「動くのか?」

 

ヨハンは無造作にしっぽを掴んで引っ張った。

 

「あっ…やめて下さいよ」

 

「変な声を出すな…!」

 

ヨハンは慌てて手を離す。

 

「部長が引っ張るからです。ただの飾りですから動きませんよ。それよりほら、早く仮装して下さい」

 

ガオンは紙袋の中から、大きな角がついた帽子を取り出した。

 

「なんだこれは?!」

 

「悪魔の仮装です。部長にピッタリでしょう」

 

「誰が悪魔だって…?!」

 

「仮装の必要もないくらい悪魔そのものじゃない」

 

エリヤが冷たく言い放つ。

 

「1人だけ仮装なしは反則ですよ」

 

ガオンは楽しそうに笑いながら、椅子に座っているヨハンの頭を、無理やり帽子の中にねじこんだ。

 

「ローブもありますから、これも付けて下さい」

 

ヨハンを立ち上がらせると、ガオンは真っ黒なローブをヨハンの首に巻き付けた。

 

「凄いわヨハン、本物の悪魔みたいよ。すごーく邪悪でひねくれてて性格が悪そう」

 

「本当に、部長によく似合いますね」

 

エリヤとガオンがニコニコしながら左右から拍手する。 

 

「…褒められてるんだかけなされてるんだか、どっちなんだ」

 

ヨハンは顔をしかめた。

 

「素直に受け取って下さい。ほら、ダイニングにハロウィンパーティーの準備をしましたから」

 

ガオンに背中を押されてダイニングに向かう途中、顔にペインティングをしたメイド姿の乳母がヨハンを出迎える。

 

「乳母まで…何ですかその恰好は?」

 

「ハロウィンですから。
それよりお坊ちゃま、招かざるお客がいらっしゃいました」

 

「客?」

 

「アンニョン、トリョンニン❤️」

 

乳母の後ろから、仮装に身を包んだチョン・ソナとチェヒが現れた。

 

「おい乳母、どうしてこいつを入れたんだ」

 

「入れないとイタズラすると言うものですから…」

 

乳母は澄ましている。


ソナとチェヒは、スタイルも露わなセクシーなナース服に身を包んでいた。ナース服のあちこちに赤いシミがついており、顔にはゴシック調のゾンビ風メイクを施している。
ソナは血糊のついたおもちゃの包丁を目前で振りかざし、芝居がかった口調でヨハンに迫った。

 

「お菓子くれないと刺しちゃうぞ❤️」

 

「お前が言うと全く洒落になってないんだよ…ソナ」

 

ヨハンが顔をしかめる。

 

「安心して、ただの血糊だから。今日は誰も刺してないわ」

 

ソナがおもちゃの包丁でヨハンの顎をくいっと持ち上げる。
ソナの後ろでは、おもちゃの拳銃を構えたナース姿のチェヒが目を光らせている。

 

「そうである事を祈るよ」

 

ヨハンはため息をついて手の甲で包丁を押しのけると、ソナの格好を舐めるように見回した。
そんなヨハンの視線に気づいたガオンがムッとする。

 

「お坊ちゃんは悪魔なのね。うーん、取り憑かれたくなっちゃう…」

 

懲りずにヨハンの首に手を回そうとするソナとヨハンの間に、ガオンが割って入る。

 

「ソナ、もう10月も終わるのにその格好は寒いんじゃないですか?風邪ひきますよ、特にその…」

 

胸の空いたナース服から溢れそうに強調された谷間に、ガオンは遠慮がちに目をやる。

 

「あら、あるものはアピールしなきゃ。
ほら、お坊ちゃんも喜んでるわ」

 

「喜んでない…!こんなどうかしてる女の胸なんか見ても嬉しくないぞ」

 

「その割にはじっくり見てましたけど。
別に僕には関係ありませんから構いませんよ」

 

「あら、喧嘩かしら?
愛想が尽きたらいつでも言ってね、私がお世話するから」

 

「貴女に任せたらヨハンは気の休まる暇もありませんね。
寝首をかかれそうです」

 

ソナとガオンはヨハンそっちのけでバチバチと火花を散らした。

 

「もういいから、お菓子をやってさっさと帰ってもらえ。
乳母、用意してあるのか?」

 

ヨハンが呆れた声を出す。

 

「はい、お坊ちゃま」

 

ゴシック調メイドと化した乳母が、いそいそとお菓子の入ったカゴを持ってくる。

 

「ガオンお坊ちゃまと私でカヌレを作りました。
こちらはキムチ入りですので健康に非常に良いですよ」

 

「すみません、乳母さんがどうしても入れたいって…僕は止めたんですけど」

 

ガオンが申し訳なさそうに付け加える。

 

「ちょうどいいな、このキムチ入りをソナに上げよう」

 

ヨハンはニヤリとして、カヌレの入った袋をソナとチェヒの所に持っていく。

 

「大丈夫かな…」

 

ガオンは心配そうにつぶやいた。


夕飯も食べたいと駄々をこね出したソナをチェヒに託してなんとか追い返すと、ガオンたちはダイニングに向かう。
ハロウィン仕様に飾り付けられたダイニングは明かりが落とされ、あちこちに配置されたカボチャのランタンで雰囲気満点に照らし出されていた。

 

「我が家がこんな風になるとはな。エリヤとガオンがやったのか?」

 

「ガオンが誘ってくれたのよ。うちでハロウィンパーティーをするなんて、初めてだからワクワクしちゃった」

 

白雪姫の姿のエリヤは、嬉しそうにランタンを覗き込む。

 

「ほら、このカボチャはみんなでくり抜いて料理したの」

 

「僕もずっと一人暮らしだから、こんな風に飾りつけしてみたかったんです。カボチャくり抜くのも楽しそうだし」

 

ガオンが照れくさそうに笑う。


確かに、ここに集うものはみな大切な家族を失った人間ばかりだ。
その孤独な魂が寄り添って、家族のようなものを作ろうとしている。
互いの存在で互いを埋め合う為に…。
ガオンの気持ちが分かるような気がして、ヨハンはガオンとそっと視線を交わしあい、表情を緩めた。

 

「それじゃパーティーを始めましょう。
今夜は乳母さんも一緒に」

 

「それは構わないが…料理は?
誰が担当したんだ?」

 

ヨハンの目が泳いでいる。

 

「えーと主に僕が担当したんですけど、乳母さんには食前のスープを作ってもらいました」

 

ガオンの目も泳いでいる。

 

「食べ過ぎ飲み過ぎに備えて食前に薬膳スープを召し上がってください。
ガオンお坊ちゃまに教わったパンプキンスープに漢方を入れました」

 

乳母が、見た目には美味しそうな鮮やかな黄色いスープを配膳した。

 

「漢方…それは身体に良さそうだ」

 

ヨハンは苦笑する。
乳母の心遣いを無下にする事も出来ず、ヨハン達は恐る恐るスープを口に運んだ。

 

「うん…悪くない」

 

ほろ苦いパンプキンスープで幕を開けたハロウィンパーティは、その後ガオンが作ったご馳走を囲みながら、大いに盛り上がった。

 

〈完〉

 

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